支えを作っていく
大人の方のレッスンもさまざまです。子供の頃に経験があって、ここで改めて奏法も含めてレッスンを開始した方がいます。
「ロシア奏法による初めの一歩」を使って、レッスンをしていくことにしました。
私の先生の著書、「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」には「日本人がイメージする『ロシア奏法』という『奏法』は存在しない」と書いてあります。
確かに、そのとおりです。ただ、「現在日本語で出版されているものの中」では、ロシアの教本を訳したこともあって、支えを作るイメージを持ちやすいという点で、使いやすいと判断したのです。
身体の使い方を意識していく
椅子に浅く腰かけること。身体をおへその下の「丹田」を意識して前傾させ、自然に下向きの力が使えるようにすること。足でしっかり身体を支えること。
これを意識していくことから始めます。
同時に、手を自然に置くと、手は逆ハの字になるはずなのですが、ピアノを弾いた経験のある人は、むしろこれが難しいようです。
どうしても、肘が横に張って「まっすぐ」あるいは「ハの字」になってしまいます。この方も、右手は上手にできるのですが、左手が難しいようでした。
私自身をふり返っても、右手はできるのに、左手がうまくできない状態が長く続きました。当時は練習時間もあまり取れなかったので、筋肉がついてきて、ある程度形ができるようになるのに、1年以上かかってしまいました。
手の内側の支えを作る
その上で、手の内側の支えを意識して音を出していきます。
最初は3の指、中指から。指の付け根から曲げて、手の内側の筋肉を意識して一音を響かせていきます。
前回、鉄琴を使って、「響く」ということのイメージを持ってもらいました。そのイメージを頭に置きながら、指で鍵盤を弾いて、すぐ力を抜く、その練習をしていきました。
何回か練習しているうちに、少しずつ、コツがつかめてきたようです。
らせん階段を上るように
進歩のイメージは、つい直線になりがちです。そうすると、同じことを指摘されると、進歩していないように感じがち。でも、実際はそうではありません。
私はらせん階段をイメージしています。同じところを通っているように思っても、一周回っていれば、その分だけ違うとらえ方ができるし、違う景色が見える。
例えば、逆ハの字に手をおくこと。続けていれば、前回よりも、前腕の筋肉がついているわけですから、「実際にできる」状態に近づいています。
ついつい、すぐ結果を求めがちですが、少しずつ少しずつ。でも着実に「響き」が出せるようにしていく。
私自身も、その学びの中にいるひとりです。常により良い響きを求める気持ちを常に持ちつつ、らせん階段を一歩ずつ上っていきます。