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空間の音を聞く

先日の調律の時に、「いつも、ピアノのふたはどんな状態で弾いていますか?」と聞かれ、「半開です。」と答えました。

「全開だと、響きすぎるような気がして…。」と言ったのですが、調律時に全開にして、その後、そのまま弾いてみたら、このほうが響きがよく分かって、しかも音が大きすぎるというわけでもありません。

そこで、練習やレッスンの時にも全開にすることにしました。

左右のバランスを聴き分ける

昨日のレッスンで、小学生の生徒さんの演奏を聴いていて、「低音が大きいな。」と感じました。

自分の手の感覚と、直接出てくる音を聴いているとそうなりがちです。

ちょうどピアノのふたは全開です。その先に私が立って、「このあたりの音を聴く気持ちで弾いていみて。」と言いました。

小学校1年生ですが、その感じをつかめたのでしょう。音が変わってきました。左右のバランスが良くなってきたのです。

手の感覚だけでは、左右のバランスを本当にとらえることは難しいです。ちょっとした違いを修正することも難しいのですね。それが、空間に広がる音に注意を向けることで変わってきます。

姿勢が変わった

その後に来た中学生。やはり、右手の音よりも左手の音のほうが大きく聴こえます。

同じように、「ここの音を意識して聴いてみて。」と全開になっているふたの先に立ちました。

今度も明らかに音が変わってきました。左右のバランスが取れて、メロディーが心地よく聴こえます。

弾いた後、生徒さん本人が「そこの音を聴こうと思ったら、背中が伸びました。」と言いました。

以前にも、その生徒さんのお母様から、「姿勢が悪くて、時々言っているのですが、なかなか直らなくて。」というお話を伺ったことがありました。

「姿勢を直す」のではなくて、「自分の弾く音の先を聴き取ろうとする」「空間に自分の音がどう広がっているのか聴こうとする」ということで、姿勢が自然に変わっていったのです。

空間の広がりを意識する

音を聴く時に、漠然とではなく、空間のこの部分の音を聴こうと思う、と意識を変えることで、いろいろな身体の部分が調整されていくということがわかりました。手元のタッチから、姿勢まで、さまざまな要素があります。

実際に、ホール等で演奏する時には、さらに大きな空間、さらに広がりにある空間を意識していくことになります。

レッスン室の中であっても、あるいは練習の段階であっても、その空間の広がりについて意識を持てるかどうか、ということはとても大切です。

ふたを全開にすることで、生徒さん自身の中でも意識が変わっていき、演奏が変わっていく。

調律師さんのアドバイスでふたを全開にしたことで、生徒さんたちにも思わぬ良い影響があり、うれしくなりました。