「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」出版記念セミナーに行ってきました
私のピアノの師匠、大野眞嗣先生の出版記念セミナーに行ってきました。本が出版されて2ヶ月。増刷を重ね、楽器店の書籍コーナーには平積みされています。
それだけ、「響き」で音楽を作っていくピアニズムが注目されているということでしょう。
響きで音楽を作る
前半は、大野先生と川村文雄先生との対談でした。
響きで音楽を作っていく最大の特長として、「どの楽器の奏者も声楽のように歌わせる」「もっと人の声のように、血の通っているように弾いてほしい」という部分に尽きるのではないかと改めて思いました。
ベルカント唱法も話題になりましたが、大きな声で歌うのではなく、小さくてもホールの隅々まで響く音。
フレーニの歌声が頭の中に浮かんできます。ピアノであの歌声、特にピアニッシモの響きが再現できたら、それはなんと素晴らしいことでしょう。目指していくべきはそこにあります。
川村先生のお話の中からは、「倍音をコントロールしていく」という言葉が印象に残りました。
確かに、今、私にとっての最大の課題である、音色の弾き分け。まさにこの部分であると思います。いかに倍音を生み出し、コントロールし、響きを調和させていくか。
より音楽を感じ、より美しいものを自分自身で発見していく。そのために、響きをコントロールしていく感覚をもっと強く持っていきたい、そんな思いになりました。
25のタッチ
後半の公開レッスンでは、甲賀先生が姿勢の基本を確認し、25のタッチの弾き分けを説明なさいました。
改めて姿勢・軸・肩甲骨から腕の意識など、整理していただいて、確認することができました。
タッチは、前回の私のレッスン時よりも増えていました。ブログで25に増えていたことを知っていたのですが、ひとつずつ解説していただけたのは、ありがたく思いました。
それぞれのタッチについて、大野先生ご自身から、「アルゲリッチが16分音符を弾く時に多用しているタッチ」とか「ガブリーロフがよく使うタッチ」「ホロヴィッツがこういう場合に使っているタッチ」などの補足説明もあり、音楽の中でどう使っていったらよいかのイメージが持ちやすいご説明でした。
モーツアルトのピアノ・ソナタ大4番。冒頭の1フレーズ、右手部分だけでも、一音ずつタッチを変え、音楽を作っていく、その実例を見せていただくことができました。
大野先生の演奏も聞くことができて、その豊かな響き、多彩な音色は心に直接伝わってくる感じがしました。
音楽の中にどう生かしていくか
結局、大切なことは、そのタッチを、響きを演奏者がどう生かしていくか、追求していくことにあると、自分自身を振り返る機会になりました。
一音ずつ、タッチを変え、響きを変え、音楽を作っていくこと。つい流れの中で、安易に弾いてしまいがちな「一音」の性格を自分なりにどうとらえていくか、楽譜とピアノと向き合っていくこと。
大野先生との出会いからまる7年。新たな節目に、またたくさんの課題を教えていただくことができた、そんな深く、有意義な時間となりました。