大人のレッスン

鍵盤の上の空間を使う

ロシアピアニズムの奏法のレッスンに、遠方からいらっしゃっている生徒さんがいます。

「耳で響きをとらえる」という感覚が身につき、ピアノの響きそのものも大きく変わってきました。

まとまりを意識して手を動かしていく

ショパンのノクターンのレッスンをしていて、全体としての響きがずいぶん美しくなったと思いつつも、気になる部分がありました。

オクターブや、それ以上の音程の跳躍部分です。ドからドへうごく、その2つ目の高いドの音が、押さえ込まれた感じの響きの少ない音になっていました。

手の使い方を見ていると、小指の付け根の部分が使えていません。そのために、響きの薄い音になっていたのです。

逆に、小指の付け根を使えるように手を動かすにはどうしたらよいか、と考えていくと、その前の低いドの時の親指の使い方で高さを出すこと、そしてその親指を起点に上から子指を入れていくような感覚で弾いていくことが重要であることが分かりました。

響きの薄い音があったときには、その前の音を出す時の指の使い方に気をつけていく必要があることは多いです。

まとまりを意識して、手を使っていくことで、ポジションを一定に保ち、美しい響きを保ちやすくなります。

鍵盤の上の空間を使う

もっと大きな跳躍音程の部分の場合はどうしているのでしょう。曲の中には13度の跳躍もあります。

そういう時の弾き方、「こんな感じで」と私が弾いてみると、「鍵盤の上の空間を使っているんですね。」生徒さん。

確かにそうです。鍵盤の上の空間を使っています。そのことで、真上から子指を使って打鍵することができるようになります。

ロシアピアニズムの奏法の場合、移動も単純に最短経路を平行に移動するのでなくて、鍵盤の奥行きも使うし上も使っています。

立体的なイメージで鍵盤と対することで、響きも立体的になっていきますし、同時に音楽も奥行き、広がりができていきます。

響きで音楽を作ることの楽しさ

家で練習をしていたら、生徒さん本人よりも、ピアノ経験の長いご家族の方から「音が変わった」と言われたそうです。

どうしたらより良い響きで演奏することができるか?ということを常に考えているからこそ、音のとらえ方も変わってきます。

その積み重ねの中で、耳も響きを聴き分けられるようになっていくし、手や身体の使い方も変わっていきます。

その結果として、音楽の感じ方そのものも大きく変化していきます。それが、とても楽しいのです。

生徒さんの演奏を聞きながら、奏法の持つ魅力を改めて感じました。

ピアノを楽しむ

せっかく習っているのですから、ピアノを楽しんでほしい、と思っています。「楽しむ」のもいろいろな観点があります。人間は「自分の成長を実感できたとき楽しいと感じる」のだそうです。それも1つです。

自分の好きなジャンルの音楽を弾いてみる、これも楽しさの1つだと思います。特に、大人の趣味の方などはそうですね。

私はクラシックが専門なので、ポピュラー音楽は詳しくはありませんが、生徒さんたちが「弾きたい」と思う曲に触れ、一緒に楽しんでいきたい、という思いがあります。

好きな曲、探してみます

中学3年生の生徒さん。去年から「気分転換に練習して、ピアノが弾けるようになりたい」とのことで来ています。

弾きたい曲がポピュラー曲だったので、教本で新しいリズム、和音にも慣れていけるように、と「ピアノランド」を選び、3巻に入りました。

忙しい日々ですが、勉強の合間に気分転換に練習しているそうで、両手で弾くことにもずいぶん慣れて、スムーズに弾けるようになってきました。

ふとしたタイミングで「教本がどれくらいまで進んだら、好きな曲が弾けるようになりますか?」と質問がありました。

「今でも、曲によっては弾けるものがありますよ。」ということで、いくつか、たとえばこれというように、手元に楽譜があるディズニーやジブリの曲を例に挙げてみました。

ただ、中学校3年生男子には、ちょっと「子供っぽい」かもしれません。どうやら自分なりに弾きたいと思う曲があるらしい。

「これくらいの感じ。右手がこうで、左手の動きの少ないものなら弾けるよ。」と言うと、「探してみます!」と言っていました。

デジタルネイティブ世代ですから、きっと私よりも上手に検索し、自分にとって魅力的な曲を探し出してくるでしょう。どんな曲を持ってくるのか、私自身もそれが楽しみでもあります。

連弾、伴奏がつくときれいですね

もうお一人は、大人の方です。発表会も「出てみます」ということで、今回は連弾での参加です。

ちょっとおもしろい連弾曲を見つけ、それを弾くことにしました。「きらきらぼし」と「パッヘルベルのカノン」を組み合わせてあります。

生徒さんが弾くのは主に「きらきらぼし」。そこにセコンドパートの私が、パッヘルベルのカノンを入れていく、という感じです。

前回のレッスンで、合わせてみました。細かい音符が入ると、だいぶ雰囲気が変わってきます。

終わって「伴奏がつくときれいですね。雰囲気がずいぶん違います。」と言っていました。

これも、「レッスンに来て弾いているから」こその楽しい体験です。

いろいろな楽しみ方がある

音楽にはいろいろな楽しみ方があります。聴くこともとても楽しい。ただ、自分で能動的に関わるとまた違う楽しさが見えてきます。

ピアノが弾けて、自分で実際に音が出せると聴き方も変わってきます。作曲者や演奏者の細かい工夫に、より気づきやすくなり、今までよりも深く味わえるようになることもあります。

一人ひとりの生徒さんの「楽しさ」に寄り添い、その幅を広げていく。レッスンを通してそのお手伝いができたら、それほどうれしいことはありません。

設計図を書くみたいな感じですね

大人の生徒さん。技術者として、お仕事をなさっている方が、先日のレッスンでこんなことをおっしゃっていました。

芸術は感性が重要だと思っていた

発表会に向けて、とても熱心に練習していらっしゃいました。まだ始めて間もないので、今回は連弾曲ですが、両手の動きのある曲にチャレンジです。

左右1オクターブ違いで同じメロディを演奏する部分の右手ですが、指遣いが良くなかったため、フレーズの途中でポジションを大きく移動することになり、途切れてしまっていました。

いっしょに楽譜を見ながら、「このミは1回めは3の指を使うけれど、2回目は4の指を使って、こう動いていくと途切れません。」とゆっくり確認していきました。

「なるほど。らくに繋がりました。」「指遣いをそれほど意識していませんでしたが、こうやって追っていくと、きちんと弾けるのですね。」

「芸術は感性が重要だと思っていましたが、技術者が設計図を書くみたいなこういう部分があるんですね。」

そうです。もちろん、「感じること」がとても重要であることは間違いありませんが、実は、計画的に行う部分もたくさんあります。

特に指遣いは大切

特に指遣いは大切だと私は考えています。それは、私自身の手が小さいことも理由としてあるかもしれません。

外国版の楽譜の場合、特に多いのですが、「この部分、この指遣いで弾けるの?」と感じることがあります。

また、ゆっくり確実に弾く練習は欠かせませんが、そのときも、指遣いを書き込んであると、常に同じ指遣いで練習することができます。

実は、書き込まずに練習していた時、ゆっくりの練習の時と、テンポを上げて弾いた時の指遣いが違っていて、練習の意味がなかったことがあり、それ以来、指遣いは、最初の段階で書き込むことにしたのです。

レッスンに来ることで分かることがある

「今日、レッスンに来て、どこに問題があるかということと、解決方法がよく分かりました。」と言っていただきました。

同時に、音の出し方をレッスンしている中で、「奥が深いですね。」という感想もおっしゃっていました。

レッスンを始めてから3ヶ月。着実にご自身でも成果を感じています。何よりも、短期間に両手で弾けるようになってきました。

音を楽しむ「音楽」。レッスンに来ることで、近道が分かる部分がたくさんあります。同時に、奥深さを感じる部分もたくさんあります。

だからこそ、楽しい。だからこそ、ずっと続けられるのだと思います。

「一生の趣味にしていきたいです。」とおっしゃって帰っていかれました。お手伝いができて、本当にうれしく思っています。

大人のピアノレッスン

趣味で習いたい、ということで通っている大人の生徒さんもいらっしゃいます。皆さん、それぞれお仕事をお持ちで、お忙しい中、ピアノを楽しんでいます。

目標があってそれに向かう

ピアノについての目標もいろいろです。例えば「 音楽イベントにキーボードで参加してとても楽しかった。 両手で弾けるようになって、参加したい」という方がいらっしゃいます。

ポピュラー音楽を中心に弾けるようになりたいそうです。今は「ピアノランド」でレッスンしていますが、とても意欲的で、「たとえ少しであっても、ピアノに触ろうと思っています。」と 毎日練習しているそうです。

そろそろ両手で弾く課題に入ってきていて、「やっぱり両手は難しいですね。特に別々のタイミングで手を動かすのは難しく感じます。」と言っていましたが、楽しそうにピアノに取り組んでいます。

「ロシアピアニズムの奏法を学びたい」という目標を持っていらっしゃっている方もいます。子どもの頃にピアノを習った経験があり、管楽器の演奏経験も豊富です。

この方も「良い響きで弾けるようになりたい」という思いで、お家でも時間をやりくりしつつ、練習しているそうです。

レッスンそのものを楽しむ

もうお一方は、お仕事が忙しい。以前病気をして、そのリハビリもかねてピアノを習いたいとのこと。

「子どもの頃は習っていたんだけど。あと、小学校の教員免許状を取るのに、バイエルをやった。今は、ほとんど練習はできませんね。」と言いながら、レッスンに来て、教本の曲を弾いたり、連弾をしたり。

新しい曲に入って、「なるほど、この曲はこういう感じなんだ。」と言いいながら、「新しいことを学ぶ」というレッスンそのものを楽しんでいる感じがします。

第3の場として

大人の場合には、練習できるのにこしたことはありませんが、現実的には難しい場合もあります。

考えてみれば、私自身もそうでした。「フーガ、半分しか弾けません。」と言って、先生に「『フー』だね。」と言われたこともあります。

それでも、続けていくことに意味があると感じていました。仕事と家庭以外の第3の場。そこで学ぶ時間を持つことで、また、次の仕事や家庭生活への活力となっていました。

今度は、私自身のレッスン室がそんな場になってほしい。仕事と家庭以外の場。そして、次への活力となる場。それを作りたいという思いで、大人の方のレッスンをしています。

耳が追いつく速さで練習する

ロシア・ピアニズムの奏法のレッスンに来ていらっしゃる大人の生徒さん。だんだん響きが変わってきました。

親指の使い方が分かって響きのある音が出せるように

前回のレッスンでは、親指の使い方をお話しして、それが分かった途端、響きがまったく変わってきました。

2週間たった今回。単音で指の使い方を練習する教本では、響きのある音で弾くことができていて、前回、分かったことを意識して練習してきたことがよく伝わってきました。

私自身もそうなのですが、レッスンで「分かった」と思っても、家で練習しているうちにズレが出てくることはよくあります。

今回、それがほとんどなかったのは、御本人の中に、しっかりと「これだ!」という手応えがあったからでしょう。

細かく動く部分は耳の追いつく速さで練習する

曲を弾いてみます。今回は、バッハのシンフォニア7番とインベンション13番です。前回シンフォニア7番でとても美しい響きが出ていました。そのポジションのままインベンションの13番と思っての課題です。

実際の曲の中での様子を見ていると、出だしの部分は意識して弾き始めているのですが、途中、特に16分音符が続くと、だんだんポジションが下がってきます。

特に離れた音を弾く時に、親指を使う場面でさがりがちでした。例えば3の指でラを弾き1の指でレを弾く、という使い方をする時にどうしても親指を付け根から使うのが難しいのです。

そこを意識しながら、ゆっくり弾いていくと、全体としてポジションの上がった状態を保ったまま、美しい響きで弾くことができました。

「親指を使った時にポジションが下がっても、曲を弾くことに意識がいくと、何となく分かっていてもリセットできないんです。」とおっしゃっていました。

響きを感じながら弾く練習を重ねる

ゆっくり弾くと耳が追いつきます。ポジションが下がると、耳が聴き取ってくれるので、リセットすることができます。

最初のうちは、手・指の感覚と音の響きの違いを頭の中で1つにしていくことが特に大切だと考えています。

実際に速いテンポの曲の場合には、1音ずつ聴き取っていくというより、まとまりでとらえていく感覚になります。

だからこそ、ゆっくりしたテンポで弾きながら、響きを感じつつ練習することが重要になってくるのです。

一念発起してピアノを始める

趣味で弾きたいという大人の方が入会なさいました。 お仕事をしている40代の方です。 以前から習いたいと思っていたのだそうですが、今までは、なかなかきっかけがなかったとか。

きっかけはアンサンブル

今回、直接のきっかけは、昨年末にアンサンブルに参加したことだったのだそうです。

それぞれが弾ける楽器を持ち寄って一緒に演奏したのだそうです。お話を伺うと、ヴァイオリンや管楽器などさまざまな楽器を弾く方が集まっていました。

その中に、キーボードで参加したそうです。知っている方に楽譜を見てもらい、1本の指で弾けるように、コードの中の1音を拾ってもらっての参加でした。

でも、とても楽しい経験だったので、ぜひ、両手で弾けるようになりたい、自分が弾きたいと思う曲を弾けるようになりたい、と一念発起、レッスンにいらっしゃいました。

両手で弾けるようになることを目標に

不規則かつ長時間会社にいるお仕事なのだそうですが、空いている時間を使って練習していき、両手で弾けるようになるのが目標とのこと。

大人用のピアノ教本や、コードから始める教本など何種類かを一緒に検討した結果、 「ピアノランド」を使っていくことにしました。

ポピュラー曲を弾けるようになりたいというご希望なので、音の響きやリズムなどが近いこと。大人の教本に比べると、両手で弾くようになるまでのステップが小さいので、スムーズに進められること。

練習時間が取りにくい現状から考えると、1つのステップが大きい大人の教本よりも、結果的に楽しく、スムーズに進められると判断したからです。

やりたいと思った時がチャンス

レッスン日には、残業を時間に合わせて切り上げるようにしたのだそうです。1つやりたいと思ったことを始めると、それが核となって、さまざまなことを整えていけるようになります。

日常生活は、ほうっておくと周囲に合わせてすべてが進んでいくようになりがちです。その中で「これ」という何かに「主体的」に取り組むと、そこから物事が変化していきます。

電子ピアノも購入したということで、いよいよ本格的にレッスン開始。目標の「両手で弾けるようになる」を目指して、練習に取り組んでいきたいと、うれしそうにおっしゃっていました。

親指の使い方を変えて響きが変わった

ロシアピアニズムの奏法のレッスンに来ている大人の生徒さん。だんだん響きが変わってきましたが、昨日、親指の使い方について意識が変わったことで、響きが大きく変わりました。

ご自分でもはっきりと分かったようで、「これほど違うとは思いませんでした。」とのこと。大きく手応えを感じたようです。

従来の奏法とは親指の使い方が違う

ピアノを弾く時、2(人差し指)~5(小指)の指は「付け根から曲げる」感覚で支えを作り、弾いていきます。

ところが、親指は他の指と曲がる向きも違いますし、指そのものにある関節の数が2つしかありません。

ロシアピアニズムの奏法でピアノを弾く時、その親指をどのように使っていくのかということはとても重要になってきます。

基本的に、親指は他の4本の指と向かい合うように曲がりますし、それだからこそ、物がつかめます。そして、ロシアピアニズムの奏法の場合、普通に物をつかむときの向きで親指を使い、ピアノを弾いていくことになります。ここが、一般的な奏法と大きく異なる部分です。

親指の使い方が変わると、全体のポジションが上がってくる

今までも、「立ててください。」とか「もっと全体のポジションを高くして。」などお話してきたのですが、今ひとつわかりにくかったようでした。

昨日のレッスンの時に、やはり親指の位置が下がっていましたので、改めて指の関節の位置を確認しつつお話をしました。

他の指の「付け根」にあたる関節は、もっとずっと手首に近い部分にあること。そこから曲げる感覚を持ち、同時にそこを使って鍵盤に置いていく感覚であること。

もともと私の師匠の大野眞嗣先生のブログや動画はよく見ている方ですから、「あの手の形は、こういう使い方をしているからなのですね。」と、とてもよくおわかりになり、納得できた様子。

「では、そのイメージで親指を使っていきましょう。」ということで弾き始めると、手全体のポジションが今までよりもはるかに上がり、同時に響きも上に上がってくるようになりました。

「今までのは何だったのでしょうね。」

生徒さん自身も、今までとは全く違う響き方に「これほど違うとは思いませんでした。今までのは何だったのでしょうね。」と驚いていました。

「親指の音がベタッとした感じは、何となく感じていたのですが、そのまま弾いているうちに、他の指の音もそちらに合ってしまい、結局、自分自身の感覚そのものが変わってきて、気にならなくなってしまっていました。」

「ほんとうに、全然違いますね。」

一つずつ、段階を経てここまできましたが、響き方の違いがご自分ではっきりとわかったことで、また新たな楽しみが出てきます。

今までの蓄積ができてきて、響きを聴き取る耳の訓練を重ねたところ。ちょうどそのタイミンだからこそ、今回の親指の使い方の違いによる響きの変化も、よりはっきりと分かっていただくことができたのだと思います。

一朝一夕で身につくものではありません。でも、蓄積していくことで大きな収穫を得ることができます。私もとてもうれしく思ったレッスンでした。

響きを聴きながら身体の使い方を工夫していく

ロシアピアニズムの奏法のレッスンにいらっしゃっている、大人の生徒さん。音の質が変わり、響きのある音が出るようになってきました。

手の使い方、自分の身体の使い方に対するイメージを変えることでも、音は変わり、音楽も変わっていきます。

聴き分けながら単音を出していく

単音で、響きを確認しながら、弾いていきます。

ずいぶん響きが上がるようになってきましたし、一つの音の印象の違いが聴き分けられるようになってきました。

「これは、下に落ちてしまいましたね。」とか「これはボヤッとした感じの音ですね。」など、言葉に表現できるようにもなってきました。

どんな音を目指していくか、ということも重要であり、そのためにも聴き分け、それを言葉にしていくことができるのは、とても大切なことです。

昨日は、手首の位置のイメージを変える、ということをしてみました。指3本分、下(肘の方)側にあるというイメージにするのです。

身体のイメージを変えるだけで、音が集まって、凝縮した感じになってきますし、安定して響きのある音が出るようになってきました。

音のつながりを感じながら手を使っていく

前回、ゆっくりした部分で、響きのある音が出てきたシンフォニア7番。今回は、全体もずいぶん変わってきました。

ロシアピアニズムの奏法の場合、旋回する手の動きがとても重要です。16分音符の連続の部分をとてもゆっくり、片手ずつ、旋回を意識して練習してみました。

音の響きそのものは、とても良くなってきたので、「ご自分ではどんな感じがしますか?」と聞くと「旋回させましょう、と言われたから旋回させている感じになっています。」とのこと。

次は、さらにゆっくり。音のつながりや、フレーズの中で特に歌いたい音を意識しながら旋回させてみました。

それをしていくと、音楽そのものが大きく変わっていきます。歌っている感じになってくるのです。

音楽を作るために

今度は、ご自分の感覚としても、意味のある旋回として捉えられたようです。

確かに、自分の感じる音楽を作るための奏法であり、音の響きであり、手の使い方です。それを体感することができれば、また大きく変わっていきます。

「つい、『弾ければそれで○』という感覚の練習になってしまいますが、そうではないですね。」とおっしゃっていました。

本当にその通りです。どう弾いていくか、どんな響きを出していくか。そこを考え始めたら、一つのフレーズにもいろいろな弾き方があり、どう弾いていくのがより美しいか、考え始めたらきりがありません。

そんな感覚が身につくと、さらにピアノが楽しくなっていきます。

難しいけれどおもしろい、楽しい

平日は、市内のお子さんたちが多いのですが、土曜日には遠くからいらっしゃる社会人の生徒さんのレッスンが続きます。

そのうちのお一人、ロシアピアニズムのレッスンを受けに来る方のレッスンがありました。

身体の使い方、腕の使い方、手や指の使い方。そしてとてもとても大切な耳を使って聴くこと。

バッハのシンフォニア7番を練習してくることになっていたので、2.5のタッチを昨日はお教えしました。

最初に単音で、1本ずつの指の使い方を確認していきます。その時の音の響きに注意をはらいながら、ていねいに。

私の師である大野先生のブログを読んでいた方であり、吹奏楽やオーケストラで管楽器を吹いていた方でもあるので、耳を使う、という感覚はもともとしっかりお持ちになっていました。

昨日も、「これかな?」「今度は?」というように、弾いた感覚と、出てきた音とのすり合わせをして、「指がスッといくときと、思うように力が抜けないときとで、音が違いますね。」とだんだんと響く音のイメージがつかめてきた様子。

管楽器のロングトーンの練習に近いですね、とおっしゃっていました。なるほど、そうですね。

実際に、バッハのシンフォニア7番の最初の部分で、2.5のタッチを確認しながら片手ずつ弾いていきました。

シミファソ――ファラのラで5の指を使った時、それまでと響きが変わったのがご自分でもわかったようです。「あ!」と言って弾き直しました。

今度は、大きく変化することはなく、響く音が続きました。

「家で弾いてきたのは、歌で言えば、地声で無理に出していた感じの音でした。これは、違いますね。」「うーん、難しい。でも、おもしろい。楽しいですね。」

両手でやってみます。8分音符の部分はずいぶん響きが出て美しくなっていました。 一つステップを上がった感じで、ご自分で実感がはっきり持てたようです。

響きで弾くことの楽しさが、かなりはっきりと分かってきた様子。音が変わる、響く音で弾くと、音楽そのものも変わってきます。

生徒さんが言っていた通り、「難しい。でもおもしろい、楽しい。」に尽きるのです。

幼稚園の先生のピアノレッスン

たうらピアノ教室では、保育士さん、幼稚園の先生、小学校の先生をサポートするレッスンも行っています。

先日も、幼稚園の先生が体験レッスンにお見えになり、入会されました。

私自身が、教育学部出身であり、学校現場での経験が長いので、状況がとても良くわかります。

ピアノで独奏するのとは違う要素が入ってきます。

子どもたちの状況を見ながらピアノを弾くためには、どうしたらよいのか。子どもたちが楽しく歌えるようにするためには、どうしたらよいのか。

そういうことも考えていく必要があります。

今回の幼稚園の先生の場合、オペレッタをおやりになる、ということで、そのサポートをすることになりました。

何曲もありますから、その一つ一つが確実に弾けるようになること。ピアノの部分では、まずそれを目指していきます。

そして、歌の部分の勉強をしていくことがとても大切になってきます。ピアノはピアノで練習していきますが、それと並行して、歌詞を覚えて、楽譜を見なくても歌が歌えるように勉強していくことになります。

オペレッタとなると、動きも入ってきます。そのすべてを頭に置きながら、ピアノが弾けるようにしていくわけです。

Youtubeにある幼稚園の発表会の動画を見てみたら、まあ、いろいろあること!小さいお子さんたちが一生懸命歌ったり、踊ったりしている姿を見ていると、楽しくなりました。

さっそく私自身もその曲の楽譜を用意して勉強していくことにしました。

子どもたちが楽しく音楽に触れて楽しい、と思うためには、教える側が楽しさを感じていることも大切な要素。その気持ちが伝わっていきます。

私自身も楽しみつつ、学びつつ、レッスンに臨んでいきます。